パレツト評判記(一)

北山清太郎キタヤマセイタロウ(1888-1945)

エス、キタヤマ
『みづゑ』第八十二 P.17
明治44年12月3日

 他人のパレツトを紹介すると云ふことは隨分興味の深いことで、多少研究の一端にもならうかと思ふ、で毎號の餘白を利用して專門家、秀オの嬢ひなく、可及的細かく紹介することゝせう。
 赤城泰舒氏のパレヅト 四十一年の秋神田の竹見屋から五十五錢で求めたさうで、可成新らしくないニツ折パレツトだ、外部の所々に損傷があつて鐵葉が光つて見える、六寸五分に三寸、十八仕切を十二仕切に直した嬢にガタガタする品物だ一寸拜借して手に持つて、一番右の端からホワイト、レモンヱロー、カドミウムエロー、バーミリオン、ローマスダー、コバルト、オルトラマリン、ビリヂアン、と云ふ配列で、此外に寫生の都合でべ子テアンレツト、コバルトバイオレヅト、等も使うさうだ、繪具は主にニユトンでホワイトやレモンヱローは佛國の安物でも使はれないことはないとのことだ。筆は大抵の場合は夏毛の極大羽根軸一本でやッつける。パレツトの内部の塗料が剥れた時は奇麗に剥してしまつぐヱナメルを三四度も乾かして塗れば元の通りになるさうだ。次は誰?

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