三越洋畫展覽會の水彩畫
富岡洗帆
『みづゑ』第八十三
明治45年1月3日
舊白馬會の出品展覽會は十一月一日より開催された。總數三百點餘、水彩畫は其内三十餘點であつて大幅も多くは油畫の方にあつた。
三宅氏の作十餘點構圖も月並だし色彩も皆同じようで僕は感心しなかつた。中で「樹木流」は好もしい作である、
中澤氏の「鴨川の雨」あまり雜とした筆づかいで雨らしくわ見えるが僕等には分らぬ「淡路島のパステルは目録を見ぬ内はみづゑだと思つた南氏の作品十枚ばかり過半は外國での作である、「瀬戸内海」が一番よかつた。
瀬野氏の出品四點小品ではあるが皆丁寧の作だ、「追分にて」は美しく「古驛」の構圖も變つて居るそしてしめつた空氣の感じも出て居る、
石川欽一郎氏の作五點皆臺灣での作で例の簡潔な描方で「河岸」の人物等皆一點で描かれてあり乍ら皆活動して居る氏の使用する色は美しくて見あきのせぬ色だ、「葱畑」、「竹籔」共に好な畫であつたが光線の工合と高くにあつた爲めよく分らなかつた。以上は感じ儘である、盲評多謝