水にうつる影には二通りある
園田正樂生
『みづゑ』第八十六
明治45年4月3日
水の面には、一つの物體が同時に二通りの影になつて映ります。雨天の日などには、そんなことは有りませんが・・・・・・否や!・・・・・・・・あるのはたしかにあるのでぜう、けれども太陽の光線が弱い爲めに見えません
例て一寸此の處に、一本の靑々とした綠の木が池邊に有るとしますと、清く澄んだ水の面には見るから涼しさうな靑々とした木の影が、漂ふて居ませう
普通畫には、この影のみしか、かいて有りませせん、然し氣をよく付けて見ると、もひつと影が映つて居ます、その影は美しくは有りません。
ちよつと見た所では灰色をして居ます、この影は、人の影が地面に薄黑くつうつるでせう
あの影と性質は同じもめです
そうしてその色彩を有した方の影は見る者の位置に從つて動きますが、友色の影は見る者の位置に依つて變ることは有りません、ただ太陽の地置によつて、太陽が東にあるときは西に、太陽が西にあるときは東にその位置を變じます、 (福岡縣嘉穗園田正樂生)