讀者の領分


『みづゑ』第八十六
明治45年4月3日

□みづゑ八十五號の池畔の森比日谷の午後などの挿繪は實によい繪である、地方に居る我々はかゝる偉作に接する事がまれである、どうか昨秋の文展出品の綠色の流朝サンミシエル橋畔等を原色版としていたゞきたい、武知生)■鵜澤先生の三脚も中々しやべりますね、汐舟へ睡蓮を見に行つた時の先生の困つた顏が見たかつた、どうか、遠慮なく毎月氣焔を聞かして下さい(上州山の子)■長野氏の『大下藤次郎氏の逸事』を讀んで、思はず涙が出た、ほんとに大下先生は親切な方だ、あゝ、どうして死んで仕舞はれたんだらう(廣島Y生)■風景畫帖を買つて見ました、印刷が非常に精巧で原色版よりも、何だか石版の方が、よい樣に思はれた。泰西の部の『海』等は素敵だ、それに鳥渡はがす事が出來る樣にしてあるから額に入る事が出來て中々氣が利いています(神田生)■僕はつい近頃の愛讀者でず、今迄内地に居た時は、いろいろな美術雜誌を見て居ましが、こちらへ來てから或る雜誌の廣告で『みづゑを知つて朔月から讀んで居ますが、其の原色版の精密なると記事の豊富に旦つ初學者の爲めに至つて親切なるのは外の美術雜誌の及ばない處で、吾々、地方の者が畫を學ぶには好伴侶であると云つて人々に勸めたいと思ひます、(朝鮮光月の人)■私の友達『みつゑ』!其後は益々發展逝きし先生もさぞかし滿足の事だらう、本月號の挿繪池畔の森、日比谷の午後共に私か原色版にして見たいとの希望!果して實現せられた快!私は『みづゑ』に對して希望がある私をして云はしめよ、紙質を今少し惡くして出來る事なら原色版一枚でも增しそれも出來ざれば毎號木版畫の二三枚も入れて頂きたい(東都の愛讀奴)

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