糸滿の刳舟に就て

吉田博ヨシダヒロシ(1876-1950) 作者一覧へ

吉田博談
『みづゑ』第八十七
明治45年5月3日

 糸満は琉球の首都那覇から二三里許りの處にある漁村で、圖は其處の漁船を描いたものである。往昔は皆この船に乘つて海上遙かに臺灣あたり迄出掛けたそうだ、若し不幸にも、途中で暴風等に遭遇した折は、舟と舟とを三艘位結び合せて、風のまにまにまかせて置けば、轉覆の恐れもなく至極安心して居る事が出來る、又若し一艘丈けで覆へつた折には、一人で元に返して平氣で漕ぎ戻る事が出來るさうだ、だから始めて汽船が此の地方ヘ航した折には、皆若しあの船が引覆つた時にはとても元にかへすことが出來ないからと云つて誰も乘るのを恐しがつたさうだ。(吉田博氏談)

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