問に答ふ


『みづゑ』第八十八
明治45年6月3日

■一、習作、スタデー、装飾畫風、デッサン、其意如何、二、黒田清輝氏、和田英作氏、吉田博氏、滿谷國四郎氏、及三宅克己氏の住所知りたし(無名生)◎一、習作及スタデーは同意味なり、習作とはある製作を成さん爲の習作等を云ふ、装飾畫とは圖案化されたもの丈事、デッサンとは邦語にて素描と云ふ、木炭や鉛筆にて形や調子を描きしもの、二、黒田清輝氏、(麹町區平河町六ノ十四)、和田美作氏、(麻布區霞町二十六)、吉田博氏(本郷區駒込動坂百)、滿谷國四郎氏(府下日暮里村千百十八)三宅克巳氏(府下淀橋町柏木四〇七)
■一、油繪とペンキ繪との鑑別法、二、中村不折氏の不折は雅號にや又本名は何と云うや、三、墨繪專門家(擦筆肖像を除き)など言うものありや四、研究所には平均生徒何人位を有するや(田舎漢)◎一、ぺンキ繪は美術品に非ず、尤も藝練家か美術品を造らんとして用うるならば美術品が出來る筈なれども元來ペンキなるものは、一種の装飾用品にして建築物或は看板等の塗料なり、油繪具とペンキ繪具とは、似よりたるものなれどペンキの方は、極粗製品であると云つていゝだらう、されば油繪とペンキ繪の鑑別法を知る必要も無き事と思ふ、看板にも或るものには、場合によりて油繪具を用ひる事もあれど看板とか建築如き塗る可き廣い部分を以て居る物に高價なる油繪具を用ふる愚を成す者もなかる可し、二、不折は雅號なり本名は中村鐵太郎、三、元來黒繪とは畫を描く爲の研究畫にて外國にはカッサン、如き鉛筆畫專門の畫家あれども我國にはなし、四、確實なる統計は不明なれども平均七八十名位ならん、
■一、圖案の初歩より學びたし如何なる書物がよきか、少し進んでは如何なる書を參考としてよきか(但し建築圖案は除く)二、圖案の雜誌ある由なれども記者先生御承知ならば御敎示願たし、◎一、芳川流外著模樣書初歩(付參考書)價四十五銭送料六銭、小室信藏著一般圖案法、價二圓送料十八銭、同氏著圖案法講義、價四十銭送料六銭、白濱徴著普通敎育圖案集、價三十銭送料四銭、其外にもありますが記者の見たのは、一般圖案法文で外のは未だ見た事はありません、同書等は、よき參考書と思ふ、其以上は自然物に就いて自から考案を凝した方が面白き圖案得る事が出來よう、總て神田區表神保町東京堂書店にあり、二、雜誌は以前には聞きしものあれど此の頃發行して居るや否や不明、京都には、染織圖案の誌雜有し由に聞き及び居れど誌名、價、發行所等不明

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