光風會第一回展覽會水彩畫パステル評

赤城泰舒アカギヤスノブ(1889-1955) 作者一覧へ

赤城泰舒
『みづゑ』第八十九
明治45年7月3日

 六月九日から二十九日迄向二十日間、上野公園竹之臺陳列館北部にて第一回の展覽會が開催された、發起者は中澤弘光、山本森之助、三宅克已、杉浦非水、岡野榮、小林鍾吉、跡見泰氏等で出品者の多くは、前の白馬會に關係ある人達である。從つて白馬會と云ふ、名目が、光風會と改めたようなもので内容に於ては、少しの變りも見出されない、出品總數三百八十九點、内、水彩畫四十點、パステル畫七點、装飾畫十四點、燒畫四點、版畫三點其他に油畫である、會場の装飾に意を用ひられた丈あつて心持がよい。
 例によつて水彩畫及パステルに就いて感じた事を書いて見る、盲評を謝して置く。
 陳列されてあるのは第二室である、出品畫は、點數に於て微々たると同時に内容に於ても勝れて居るものとは思はれなかつた。柴田節藏氏筆『枇杷』甘く、寫生されてはあるが、色は貧弱で堅い、調子等に就いても深い研究はされてない、其の畫の前に立つて甘いとは思へるが、心持よさとか深さとか云ふ心持は感得する事は出來なかつた。
 野田半三氏筆『町はづれ』ワツトマン半切大の畫で、三宅氏の『秋景色』と共に水彩畫中の大作である、非常に丁寧に寫生されてあるが、餘り描き過ぎて、時間等の説明に就いては忘れられてしまつてある、細心に過ぎはしないかと思はれる。
 相田寅彦氏は色鉛筆畫及びパステル畫と合せて三點出品されてある、三點共いづれも美しい出來ではあるが黑ぽい冷い色が目立つ。
 赤塚忠一氏筆『雨後の三笠山』雨後としては全體に弱く、色の感じもどうかと思はれる。
 鹽井ふく子氏筆『少さき池』熱心な根氣には敬服せざるを得ない、然し細心な努力の價値は如何なるものであらうか、水は暗い方がよいと思ふ。
 森本藤雄氏の出品は三點ある、共に色も暖くまとまつては居るが、面白いと思ふ處も惡いと思ふ處も見出せなかつた、無事な畫である。中澤弘光氏の出品は十二點ある、十六切位のものが多く四ッ切大のものも二三點あつた、輕快な心持よさは小品に於て味はれる、四ッ切の作品には全々私には同情出來なかつた『小娘』と題されたものは彩畫中で私の最も好きなものだ、八ッ切の少し大きくした位の畫で、京都あたりの寫生らしい、河端を歩いている若い二人の女の顏が描かれてある、構圖も面白く簡潔な色彩も心持よく表情も誠に面白く見られた。
 片多德郎氏筆のパステルは二點出品されてある共、に小品ではあるが面白い作品であつた、ことに『紫陽花』の方が好きだ。藤島武二氏筆のパステル『女の顔』にカンバスの上に描かれたもので心持よいものだ、肉の柔さも表情も誠に面白い。
 矢崎千代治氏のパステルには面白いものは無い。
 白瀧幾之助氏の出品は鉛筆畫に淡彩されたものである。
 三宅克己氏の出品は十四點ある、殘念な事には、餘り面白い作品は見出されなかつた、内容は兎も角描方の上丈にても洋行中のあの活氣のある作品の、或るものゝ樣なものを私は望んでゐる、今度の出品は古い以前の同氏を思ひ出さする樣な作品ばかりである、十四點の中では『庭の隅』が最も私の意を得たものである、全體に覆はれている明るい弱い黄味も面白く、花も面白かつた。

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