繪ハガキ競技會記事
『みづゑ』第五 P.16
明治38年11月3日
力(意匠) 森(技術)
一等錣曳野口六三夕の森鵜澤四丁
二等水くるま横田順三鎭守の森萬鐵五郎
三等網引山田全一社の森瀧島寛水
四等杖をちから高畑徴平秋の森小林珠郎
五等水の力三條干代子森の下道佐藤清
六等虫の力呉文平遠き森片山羊太
七等神の力長谷白眠森の暮色横田順三
八等劍の力大矢幾太郎川沿の森三條千代子
九等ワツトの發明尾關春潮新緑野口六三
十等坂に車小林華秋森の下闇巖谷夾日
十一等ニユートンの林檎巖谷小波春の森正親町公和
十二等網引巖谷夾日森に鐘樓小林華秋
十三等鐵亞鈴岡田某中野の森山崎公平
十四等自在かぎ安齋健吾夕の森鈴木昇
十五等娘の力篠原弦月森の下草山田全一
十六等力持瀧島寛水冬の森大橋三平
十七等相撲堀内汎春の森渡邊安之助十八等暴力威力倉永擣衣鎭守の森堀内汎
十九等彈丸の力藤井冬峰森と川後藤百次
二十等引力小林珠郎寺の森小宮笹舟
(以下畧)
九月二十四日第十六回開會、出品者客員會員合せて五十二人、出品數二百十二枚選評の結果上記の如し。
今回意匠の一等は力を現はさずしてよく聯想せしめ、圖柄も極めて簡潔なりし。三等は網引にて、十二等も同意匠なりしが、そは男にして且勢醗見えざりし、六等は蟻を圖案に化せしものなるが類想極めて多かりし。七等、よき思つきなりしも繪は巧みならず。八等は日比谷公園巡査の自刄にて甚だ殺風景なりし。
十一月課題鳥(意匠)紅葉(技術)
十一月二十日〆切同二十六日開會
九月二十四日は例の顏ぶれにて、選評濟みて後合作をやつたが丁度行徳の應舉の幽靈の話から、期せずして幽靈繪葉書が澤山出來た。會津の朱の盤、飢饉年の幽靈、鬼婆などで中には湯氣に上つた藥鑵の幽靈といふ頗る滑稽なものもあつて十時頃散會したが、折からしとしと降りの闇い晩で歸りを恐ろしがつた人もあつた。
●注意交換ヱハガキの返送には上記の順序によらぬものもあるべし