小村の朝
山本野琴
『みづゑ』第十一
明治39年4月18日
眞紅の微光は、今しも曉東の空より、コバルトの如き淡靄の繁りに射初めて、山雀の夢も覺めけん、小さき羽ばたきの音には、無限の歡樂もこもらずや。
小田をめぐる野川に枯蘆の影ゆれて、行々子のこひ歌となりて、新しき水の囁きと和せり。山羊の乳うる兒の影、霜白き道とほく、たどり行くさまも可憐也。
あ…かくしても明け行く小村の畫趣多き朝也。』
山本野琴
『みづゑ』第十一
明治39年4月18日
眞紅の微光は、今しも曉東の空より、コバルトの如き淡靄の繁りに射初めて、山雀の夢も覺めけん、小さき羽ばたきの音には、無限の歡樂もこもらずや。
小田をめぐる野川に枯蘆の影ゆれて、行々子のこひ歌となりて、新しき水の囁きと和せり。山羊の乳うる兒の影、霜白き道とほく、たどり行くさまも可憐也。
あ…かくしても明け行く小村の畫趣多き朝也。』