輕便畫架
美海生
『みづゑ』第十一
明治39年4月18日
輕便畫架、これは三本足の畫架や三脚の輕便と云ふ譯ではない、尚更に輕便と云ふのである。其れは畫嚢一ツあれば大丈夫である。其方法は畫嚢の袋の付いて居らない方を開き返して紐と組とを結び合するのである、若し短き時は別な紐を加へて程よくする。僕の畫嚢は自製であるから紐は六寸以上ある。結び合はすると一尺位になる。
それから使用する時は紐の方を下にして前後に開き立て、畫板をのせ又畫紙をビンで止めるなど隨意である。然して野外寫生の時草原に腰を下し、脚を延して足首と膝との間に立て、又室内机上に立てゝ畫筆を取る。
されど空間に高く上ぐるを得ない事が不便であるが、僕等の樣な初學者には豈輕便と云はざるを得んやだ。