繪畫の恩

今永英世
『みづゑ』第十一
明治39年4月18日

 繪をかいて得た利益をとの御要求に對し、私の著しい其れを記して見ませう。私は天性、不幸にも身の敵、繪の仇なる短氣と云ふ奴があつた樣でしたが、父が繪を描くからでせうか、生れながら畫がすきで、紙さへあれば他の宿題などは後廻と云ふ風であつたからか、繪をかく時の態度が慣となつたのでせう。今は全く短氣が無い樣になりましたのは貴ぶべき繪畫の恩と思ひます。

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