彩料の變化と其毒と
靜遠子
『みづゑ』第十一 P.19
明治39年4月18日
總てクローム黄。橙。等は硫氣に觸るゝか或は含硫彩料と混和すれば變色す。
鉛白亦然り、但支那白は安全。
シンナー、アンバー、オークル、皆粘土を含む是等が明礬水に觸るゝと其内のアルミニユームが化合を起し、不溶解性の粒々となり、使用に堪えず。
エメラルド緑は醋酸銅と亞砒酸銅とより成り。石黄亦砒石化合物にて共に、猛毒なり。
プルシヤンプルーは鹽化第二鐵に黄血鹽とより成る、黄血鹽は一の青酸錯鹽にて猛毒なり。
ヴェルミリヲンは硫化、水銀にて有毒なり。
一のコッブ筆洗、水呑兼用するには注意を要す、何となれば彩料不溶解性にて器底に沈澱殘留する癖ある故に。