寒き朝
紫雲
『みづゑ』第十一
明治39年4月18日
私が先日の日曜に我家の近傍の森と云ふ所へ寫生に行きました此日は寒くて外へ出るのさへ嫌でしたが勇氣を振つて家を出ました、やがて目的の地へ着きました、見ると四方皆田でその中に二三の森がありましたから、とある社の森を寫さんと傍の小流から水を汲み來り輪廓を終へ、やがて彩色し初めましたが一筆目は何の變りもありまん二筆目をと思つて繪具を着けると、溶いて居いた繪具ははや凍つて居るのです、いくら溶いてもそばからすぐと凍つてしまふのです仕方がありませんからそこそこに繪具やスケッチブックなど藏めて家に歸つてしまひしまた、