自然的の精神療治法

茅野滴翠
『みづゑ』第十一
明治39年4月18日

 僕は病氣の爲め水彩畫を始める迄では、愉快な樂みな事は少しもなかったが、畫を始めてから面白き畫の研究に心を奪はれて多少病苦を感ずる程度を減じた。毎夜惡夢に襲れたものが、近頃は寫生に出て畫面へ實景と稍々同じき色調を得た事、或は臨本を模寫して原畫と似よつた事など、愉侠な夢を見る事か出來る樣に成つた故、自然的の精神療法を受けるので、神經衰弱も幾分か良いかの如く思はれる是れ皆畫を學びて、得たる僕の顯著なる利益であります。

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