寫生日記の一ふし
辻芳三郎
『みづゑ』第十一
明治39年4月18日
一月四日、目を醒ますと早や七時半、寢過したりと、朝餉もそこそこにすまし、前夜用意の繪具、スケッチブック、藥の空ビン、三脚代用の新聞紙など片手に目的地の岩田川口を指して出掛けた、
對岸に船が一つ、其後松林をへだてゝ遙かに經ケ峯の白い冠が日光に輝いて、實に美しい景色、一心に筆を運ばすこと一時間半、やつとのことで畫き終り、傍を見ると、いつの間に來たか、小供が五六人、自分の繪を見て、クスクス笑つて居やがる
辻芳三郎
『みづゑ』第十一
明治39年4月18日
一月四日、目を醒ますと早や七時半、寢過したりと、朝餉もそこそこにすまし、前夜用意の繪具、スケッチブック、藥の空ビン、三脚代用の新聞紙など片手に目的地の岩田川口を指して出掛けた、
對岸に船が一つ、其後松林をへだてゝ遙かに經ケ峯の白い冠が日光に輝いて、實に美しい景色、一心に筆を運ばすこと一時間半、やつとのことで畫き終り、傍を見ると、いつの間に來たか、小供が五六人、自分の繪を見て、クスクス笑つて居やがる