寄書 出鱈目

愛讀生
『みづゑ』第三十
明治40年11月3日

 郊外のスケツチの折年寄りや田舍者に窺かれるのは平氣だが、同年輩殊に式部とこられては、たまらんハテなぜだらう?
 肩にはスケツチ箱、脇には三脚といふ出で立ちで、田舍に行くと「寫眞器ですか」と問ふ、又中には「藥やさんですネー」と云ふ、いつも其答に躊躇する。
 好畫題を見出し、しきりに、腕をふるうてゐると、パツク式の田吾作「作圖してゐるのですか」と幾何學的なことをいふて、首をによつと出す、?
 三脚が犬に何んと見えるか知らんが、キツと吠へられる、サテスタイルが犬ころしとでも見えるのだろう、?

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