問に答ふ
『みづゑ』第三十三 P.22
明治41年2月3日
■一友人と共に同じ臨本で鉛筆の稽古を始めましたが僕は友人よりは丁嚀なれど出來榮遲し、粗末にても澤山畫く方よろしきや二簡易透視畫法は何日頃出來るにや三色鉛筆は色彩に益する處ありや其効用を知りたし(京橋KT生)◎一作畫の迅速はスケツチなどの場合に必要のことなれど臨本の稽古などには遲くとも其臨本と少しも異ならぬやう忠實に畫く方よし二著者多忙のため發行期未定三あまり大きな利益なし■カツサン鉛筆臨本は何册なりや(兵庫MY生)◎六十一册と覺ゆ抜賣はせず、序に丸善には英文の目録もあり■山岳の發行期日を問ふ(福島四眼)◎毎年三月六月十月の三回と覺ゆ、序に三條氏の事は書状にて問合はされよ■一石井柏亭氏は日本畫も描くにや二雜誌と新聞とは挿繪に相異ありといふは如何三霧鴎生とは何人か四製版師も美術家と云ふ資格ありや五白馬の神苑と穗高山の麓の大いさ六AL號水彩畫紙とは如何なる紙質にや、色が滲み込むことなきや(小樽のぼる生)◎一然り二日本現時の有樣にては相異を見ざれど同一の考を以て畫くべきものにあらず理由は種々あり短文にては説きがたし三書状にて問合されよ四美術家といふことを得ず五前者はワツトマン全紙、後者はOW全紙六未だ使用して見ず■一私は今普通學修學中なるが日本水彩畫會研究所に入學し得べきや二日本風俗史、世界風俗史、美學及美術史、世界及近世美術史等はドノ位の學力にて讀み得べきや(山田生)◎一入學に差支なし二讀むだけなら高等小學卒業位ひでも讀めるが理解するにはもう少し高い學問がいる