第二十二回師範學校中學校高等女學校教員檢定豫備試驗問題(承前)
『みづゑ』第四十六
明治42年1月3日
▲圖畫に屬する國語問題(各五時間)
一師範學校、中學校、高等女學校教員志願者は左の問題に答ふべし(第一種受驗者の分)
講讀
一、左の文章を正しく口語文にて解釋せよ。
吾人が特に二宮尊德翁に推服する所はその人格の偉大なる點にあり翁が獨得の學識は、もとよりその一要素たるに相違なけれども吾人は翁の自信力を以て主たる要素となさざるを得ず翁の自信力とは何ぞ荒蕪を開くに荒蕪の力を以てし衰弱を救ふに衰弱の力を以てすと云ふこと即ち是なり翁曰く荒田一反を開きその産米一石ならんに五斗を以て食となし五斗を以て本年の開田料となしかくの如くにして止まずんば他の財を用ひずして何億萬町の荒蕪と雖も開き得べしわが神州開闢以來幾億萬の田畝を開拓したるも始より異國の金銀を借りて然りしにあらず必ず一鍬よりしてかくの如く開けたるなりと何ぞその意氣の壯なる。
二、左の語句の中(甲)は其の意義を解釋し(乙)は其の讀みを示し(丙)は漢字に改めよ。
(甲)利益均霑世襲財産空前絶後權謀術數盤根錯節(乙)雙六生憎蝶番衣桁敵愾心依怙贔負
(丙)のどかついたてたなばたごんごだうだんいうしょうれつばい
文法
一、いろは歌を片假名にて記せ。
二、左の文は如何なる意味に解せらるゝか若し文意に曖昧なる事あらばこれを明晰ならしめためんがには如何に改むべきか君は富士山に登らるゝか
大阪府は河内和泉及び攝津の一部を管す
三、左の句の意義の異同を説明せよ。
見ず
見じ
見ぬ
見ざらん
見ん
作文
わが家(普通文體)
女子師範學校、師範學校女子部、高等女學校のみの教員志願者は右の内講讀第二の(丙)及び文法の第三を除く(第二種受驗者の分)
、▲圖畫(用器畫)科(三時間)
注意
女子師範學校、師範學校女子部、高等女學校のみの教員志願者に限り左の問題中任意に一問を省くべし。
一、圓錐と圓柱との相貫體を如何なる位置に於て投影ぜば其切斷線の正面圓が二直線を表はすか又其場合に於ける平面圖は如何
ニ、一邊一寸五分の正八面體を左の位置に於て投影せよ。
甲、八面の一が水平なる時。
乙、對角線の一畫面に直角なる時。
三、任意の五角形を畫き其一邊に於ける一點を通して引きたる直線を以て五角形の面積を二、三、四の比に分割せよ。
四、東方に面し三十度の勾配ある丘の中腹を東北に走る小徑あり其勾配幾許なるかを圖解せよ。
五、直立せる方錐と横臥せる方柱との相貫體の圖を求む。
但錐の底邊は立畫面に四十五度傾き柱の長方面は畫面に四十五度傾き立體の軸の間には若干の距離あるものとす。