短歌折々記


『みづゑ』第五十四
明治42年9月3日

 一輪の花の一つももたぬ日を茂りて老ひてゆく日かなしむ
 夜は更けて更けて夜はまた更けはてゝ心うれしき朝となりぬ
 セコンドの七時となりぬ八時―九時夜はさながら魂奪ひゆく
 うつらうつら夢は心のくらがりにふさはしと見て覺めたる朝や
 何となく唯何となく短夜をいつはるに似てなつかしきかな
 旅やがて倦みし心をなだめるか奈良の朝毎霞こめたる

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