問に答ふ
『みづゑ』第五十四
明治42年9月3日
■獨習で木炭畫の稽古は不可能なりや、また鉛筆畫のみでは筆のイヂケルといふ患なきや(北海の一讀者)◎不可能にあらずたゞよき參考品なきのみ、又鉛筆畫と雖も畫き方によりて筆のイヂケルといふことなからん■水彩畫を學ぶに必ず人物畫を習ふべきや、必要なら其獨習法を知りたじ(曉村生)◎前號靜物寫生の話を見られよ■チユーブ入繪具固まりて困る、いかにしてよきや(自然子)◎管を破つて繪具を取出し湯に浸して軟かにしグリスリンを入れて練直すべし■サロン其他の裸體畫を集めしもの、又は一枚ものにてもよろしけれど購求することを得べきや(玉島愛讀生)◎巴里發行ヌー、ド、サロンといふ裸體のみ集めしもの年々出版せらるれど日本には輸入禁止なり■一數人團體を作つて研究するのと研究所に入りて研究するのと何れか早く上達するや二日本水彩畫研究所にては鉛筆畫も教ふるにや三鉛筆畫に粗末な描法と細密なのとあり何れがよきにや四最新水彩畫法其他の美術書は上野圖書館に寄附されしや五文房堂の割引は何割なりや六外國語に通ぜざれば洋行は出來ぬものにや(ME生)◎一教師なくして研究するのはタトヱ百人集まつて勉強しても利益少なし二鉛筆畫の課目あり三仕上つた鉛筆畫といふのは後者なり、前者は重にスケツチといふ四帝國圖書館には内務省より凡ての出版物を廻送する筈故多分備つけあるべし五物によりて割引せず、普通品は一割なり六程度問題ならん、附言こんな下らぬ質問は以後お答致さぬことゝ御承知ありたし■美術學校撰科生の資格等承知したし(京都一書生)◎直接學校に問合されよ■透視畫法獨習の好參考書を伺ひたし(江湖の人)◎日本橋金港堂發行井汲氏著『用器畫法』第三解説付可ならん價は三十八錢、又は同店發行寺崎氏著『用器畫教科書續編』附圖共五十七錢■一ガラスの描法及主として用ふる繪具を知りたし二水彩畫に線をつけるを嫌ふときくスケツチなどにも然るにや三初學のうちはあまり配合調和等の事は不必要と思ふ如何四文房堂の割引券の效用は定價の何割引にや(茨城北總生)一置かれたる周圍の色彩、又器物内の物の色等によりて、其色が透明して見ゆるものなれば、描法又は色彩については實地に寫生し研究するより他に道なし二日本畫の如き線は用ひぬとも物の感じは出る筈なり、但時として太き線にて輪廓をつくり其内へ彩色を施す場合あり三不必要どころか初めに其點を充分研究すべきものなり四前に答あり