問ひに答ふ


『みづゑ』第八十四
明治45年2月3日

□一寫生畫の研究に白き花の陰影には黄色を使ふとありしが、黄色其儘を使ふにや 二太陽を受けし瓦屋根は黄にも亦、黑にも見ゆるが、如何なる色を使ふにや三水張してもワツシの時には、ふくれ上るがそれにて宜敷か 四大下式用水筒は八ッ切箱用より大なるか(○▲生)
■一問題が散漫にて説明に窮す。白き花とても光線の關係によりて、其陰影の色一樣ならず、總じて黄色を呈すと言ふ、著者の意なれば必ずしも黄と斷定するものでない。若し黄色を呈する場合は、其の強弱を趣めて着色せらるべし、黄色その儘の使用云々は、御答への限りに非ず。二前者の問題に略等★。これは色にあらずして光りなり、無論色を以て現し得るものなれども、瓦の新きと古き、光線の度合、屋根の傾斜、等によりて相違す、斯の如き外光を描く場合は、他の物體と比蛟、對象して適當なる手段を講ぜらるべし。色侵何色と指定し得るものに非ず。三普通の描き方にてにフクレ上る事少し充分に水貼せざる故なるぺし。四大下式用なるものを特に知らず。みづゑスケツチ箱に用ゆるものならば八ツ切のものと等しきも、厚きものは不適當なり。
□水彩及油繪にて人物研究には如何なる參考書を學ぴて可なるや(紀南の靜)
■專門の良書あるを聞かず、且つ困難なるべし。左に一二を紹介する。
 入體畫法(岡田三郎助、川崎安共著) 東京京橋區南傳馬町一の二隆文館發行
 藝用解剖學(森林太郎、久米桂一郎共著) 東京本郷區湯島切通町二五畫報社發行

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