一月の美術界


『みづゑ』第八十四
明治45年2月3日

□東京勸業展覽會 同會は博覽會協會の主催にて來る三月二十日より六月二十日まで上野公園池の端勸業協會陳列館に於て開催するに決し會長に中野武營、副會長に星野錫の兩氏、審査總長に平山成信、同部長に手島精一、正木直彦の諸氏を囑托し、出品部類は前回の如く、第一部(美術)第二部(美術工藝)第三部(製作工業)とに分ち出品せしむべしとか左に出品心得の大略を記すべし。
 第一、二部の出品は總て之を鑑査し合格したるものに限り之を陳列す(帝室技藝員、文部省展覽會審査委員及同委員たりしもの若くは同會藝術顧問及審査員の作品ぼ鑑査を用ひず。又宜公設の博覽會、展覽會に出陳したるもの、衛生風敎に害ありと認むるもの並に危險物は陳列を許さず)而して出品を爲さんとする者は來る二月十五日迄に出品申込書二通を事務所(當分の内東京府廳農商課内)に差出して承諾を受け、出品に解説書を添えて三月十日より同月十五日迄に會場へ搬入すへき事。又褒賞は技藝賞、出品賞の二種とし東京府知事より授與する筈なるが技藝賞は第一、二部出品の製作人に授け、出品賞は製作人と出品人と異なるときに限り出品人に授くる由(樣式其他は同會事務所にあれば希望者は請求さるべし)
□上野に於ける本年中の各展覽會日割第一回敎育展覽會自二月一日至仝月二十九日
 日月畫會展覽會自二月十九日至三月二十日
 日本畫會展覽會自三月一日至仝月三十一日
 美術研精會展覽會 仝右
 日本金工協會競技會自三月二十一日至四月十九日
 讀畫會展覽會自四月一日至仝月三十日
 巽畫會展覽會 仝右
 寫眞研究會展覽會自三月一日至仝月三十一日
 南京畫會展覽會自四月一日至仝月三十日
 太平洋畫會展覽會自四月二十日至五月十九日
 無聲會展覧會自五月 一 日至仝月三十一日
 明治繪畫會展覽會 仝右
 天眞畫會展覽會 仝右
 二葉會展覽會自五月二十日至六月十八日
 日本彫刻會展覽會自九月 一 日至仝月三十日
 日本水彩畫會展覧會 仝右
 東京鑄金會展覽會 仝右
 文部省美術展覽會 不明
 以上の如く定められあるも開催の日等は多少變更を來すことある可し。
□東京美術學校にては今回圖畫師範科生徒約二十人を募集する由、薦擧期限は三月一日より十四日迄にして撰抜試驗は四月一日より同校内に於て施行せらるゝ筈
□三越呉服店にて近日募集する懸賞裾模樣圖案の題目は『江戸』(江戸趣味を利かすもの)、『初戀』、『春の海』、『うらゝか』、『情』其他曲線、三角形を應用したるものの七種に決定し、懸賞金額其他は前回の例に據る由。
 口日本水彩畫會新年會は一月二十八日同會研究所にて催され盛會なりき。

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