新刊紹介


『みづゑ』第九十
大正元年8月3日

◎石川欽一郎氏著洋畫印象録
 洋畫に關する諸種の問題を斷片的に述べたる書にて稍程度高き畫法講義と見るべし、吾人の常に感じて而も餘りに感ずるの多き爲、却て困却され易き種々の事項を、よく捕捉陳述せしは誠に周到といふべく、其大膽なる具體的の説明は初學者をして少しも迷はしめす導く點に於て成功しつゝあるも、其規則的命令的なる丈に或點に於ては讀者をして所謂盲從せしめざるやの疑ひ無きにしもあらず。
 表題に對しては甚だ無理なる注文なれ共、此書が全册を通じて多く説明、敎導的なる以上、今少しく内容の統一を欲して止まず、思ふに今一層根本の性質より秩序的に論述せしならば、より以上讀者に便宜を與ふるならん、尚又風景に詳論して人物に多く論及せぎりしは、聊か物足らぬ感なき能はざれ共、風景を專門として立たるゝ著者に之を求むるは無理な事實なるべし(挿繪鮮明、菊版一五〇頁、美本、目黒書店發行定價金六拾銭)

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